村上春樹短編作品における飲酒量を調査して村上春樹の肝臓を心配するブログ その2

 こんばんは。死角からの一撃です。

 前回から少し日が開いてしまいましたが、村上春樹作品の主人公、酒飲みすぎじゃね?」問題を解決するために、村上春樹の飲酒量調査の続きをやっていきたいと思います。はい。

 今回調査するのは『村上春樹全作品1979-1989 5 短編集Ⅱ』、単行本で言うと『カンガルー日和』と『回転木馬のデッド・ヒート』です。

 

村上春樹全作品 1979?1989 全8巻セット

村上春樹全作品 1979?1989 全8巻セット

 

 

 

 

 

ルール

 ルールのおさらい。読み飛ばしていいです。

  1. 村上春樹の短編小説において、どの程度の分量の酒が飲まれているかを調査する。
  2. 調査対象は『村上春樹全作品 1979~1989』および『村上春樹全作品 1990~2000』(ともに講談社)、『東京奇譚集』文庫版(新潮社)、『女のいない男たち』単行本版(文藝春秋社)に収録された短編小説全部とする。
  3. 単に「ビールを飲んだ」「ウイスキーを飲んだ」と書かれているだけで、飲んだ分量が書かれていない場合は、文脈から推測される最小限の分量を飲酒量としてカウントする。(単に「ワインを飲んだ」ならワイングラス1杯、一度でもおかわりする描写があれば2杯とカウントする等)
  4. 複数人で飲酒する描写があり、飲酒量の内訳が不明な場合は、飲酒していた人間が、それぞれ同量の酒を消費したこととみなす。たとえば、「二人でビールを四本あけた」と書かれていた場合は、それぞれが2本ずつ同量の瓶ビールを消費したこととみなす。
  5. バーやレストランで酒類を注文した描写がある場合、「酒を飲んだ」ことが直接書かれていなくても、飲酒したこととみなす。
  6. 「ワイン一杯」「ウイスキー一杯」などと書かれていて、容器に関する記述がない場合は、特に理由がない限り、グラス1杯分の酒とみなす。
  7. 「ワイン一本」「ウイスキー一本」などと書かれていて、容器に関する記述がない場合は、特に理由がない限り、瓶またはボトル1本分の酒とみなす。
  8. ウイスキーは特に明記がない限りストレートで飲んでいることとする。
  9. そのほか、文脈から飲酒量が推測できる場合は、調査者(死角からの一撃)が推測した分量をカウントする。
  10. 「いつもビールを飲んでいる」など、習慣を記しているだけで、劇中で飲酒していない場合は飲酒量にはカウントしない。ただし、「僕は三日間、毎日一杯ずつビールを飲んだ」と書かれていた場合のように、期間が限定されたうえで、作中で実際にその期間が経過した場合は、飲酒量にカウントする。
  11. 各種容器に入る酒の分量、および酒の度数は以下の表のとおりとする。この表は新しい酒が出てくるたびに随時更新する。(2017/3/15 更新)

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  12. 最後に飲酒量をまとめ、登場人物たちの肝臓を心配する。

 

 11の表について、「おだまき酒」と「ジン・トニック」を追加しています。

 さて、それでは本題。今回も張り切って調査していきましょう。 

 

カンガルー日和

飲酒内容

なし

解説

 「僕」と「彼女」が動物園にカンガルーの赤ん坊を見に行くが、カンガルーはすでにそれなりに大きく成長していて、悲しんだりする話。

 作中では酒は一滴も飲まれていないが、以下のような終わり方をするので、立派なビール小説である。

「ねえ、どこかでビールでも飲まない?」と彼女は言った。

「いいね」と僕は言った。

 

 「四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」

飲酒内容

なし

解説

 四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子とすれ違った男が、どのようにすれば彼女を口説き落とせるか考える話。

 主人公の「僕」は彼女を口説き落とした後で、「ホテルのバーに寄って、カクテルか何かを飲む」ことを計画したりもするが、あくまで「僕」の思考だけで物語が進み、実際の行動や事象についてはほとんど描かれないため、飲酒描写も存在しない。

 

「眠い」

飲酒内容

彼女:ワイングラス1杯

  • 最低飲酒量 ワイン120ml

 

解説

 結婚式に行くとどうしても眠くなってしまう「僕」と、そんな「僕」にあきれる女性の会話。

 「僕」は別の結婚式場で、ビールをひっくり返した経験がある≒ビールを飲んだことがあるらしいが、作中では眠気覚ましのコーヒーしか口にしない。

 

「タクシーに乗った吸血鬼」

飲酒内容

僕:ビール少なくとも缶一本

  • 最低飲酒量 ビール350ml

 

解説

 タクシーに乗りこんだ「僕」が、運転手から自分は吸血鬼だと告白される話。吸血鬼によると、主人公である「僕」は煙草を吸いすぎていて、酒も飲みすぎているため、たぶん血液がまずいそうである。

 タクシーを降りて家に帰った後、「僕」はとりあえず飲酒するが、これが「僕」の動揺を示すための表現なのか、村上作品だから飲酒しているのか、いまいち判然としない。

 

「彼女の町と、彼女の緬羊」

飲酒内容

僕:ビール少なくともグラス1杯*1 缶2本*2

  • 最低飲酒量 ビール1050ml

 

解説

北海道に行った僕が、昔の友人と会ったり、ビールを飲んだり、ローカル番組を見たりする話。主人公は旅行中なので当然ビールを飲む。

 

「あしか祭り」

飲酒内容

なし

 

解説

 「僕」の家にあしかがやってきて、あしか祭りのための寄付金を催促し、「僕」が厭がる話。

 作中より過去の時点において、「僕」はバーで酔っ払い、不覚にもあしかに名刺を渡してしまうという事件があったらしいが、作品内で酒が飲まれることはない。

 なお、「僕」が家に来たあしかに出したのは麦茶である。

 

「鏡」

飲酒内容

なし

 

解説

  学園紛争の時代、中学の夜警をしていた「僕」が、夜の学校で体験した恐怖体験について書いた話。ちょっとあっさりしすぎているけれど、かなりまっとうな怪談で面白い。

 再読して、僕の中で評価が上がった作品ではあるが、それはそれとして飲酒描写はない。

 

「1963/1982年のイパネマ娘」

飲酒内容

僕:ビール缶2本

  • 最低飲酒量 ビール700ml

イパネマ娘:ビール缶1本

  • 最低飲酒量 ビール350ml

 

解説

 ビーチで「僕」が、形而上学的な女の子である1963年/1982年のイパネマ娘と禅問答をしながらビールを飲む話。

 抽象的なことしか書いていないわりと極端な小説だが、とりあえずビールを飲んだと書いてあることが重要である。ちなみにイパネマ娘はビールをたくさん飲めない。

 

「窓」

飲酒内容

なし

 

解説

 手紙の添削をする会社でアルバイトをしている「僕」が、顧客の人妻の家にハンバーグを食べに行く話。単行本『カンガルー日和』収録時は『バート・バカラックはお好き?』というタイトルだった。

 「僕はあの時彼女と寝るべきだったんだろうか?」という、人妻と食事をしたらセックスするのが当然だとでも言わんばかりの一文が非常に衝撃的である。

 飲酒シーンはない。

 

「五月の海岸線」

飲酒内容

 僕:ビール缶2本

  • 最低飲酒量 ビール700ml

解説

  友人の結婚式に参加するために故郷である古い街に戻った「僕」が、海岸線を歩きながら、幻視をしたり時間の流れについてあれこれ思案したりする話。

 「僕」は故郷から離れる日と、故郷へ戻る日のそれぞれの朝にビールを飲んでおり、現実の世界(かつての故郷であり、現在の住居)を離れ、異なる世界へと誘う小道具としてビールが使用されている。

 

「駄目になった王国」

飲酒内容

なし

 

解説

 「僕」が大学時代の友人であったQ氏と出会うが、Q氏にだれか気づいてもらえないという話。飲酒シーンはないが、大学時代の僕とQ氏にビールを飲む習慣があったことは明記されている。

 個人的に、最後の文章が非常に好き。 

 

「32歳のデイトリッパー

飲酒内容

僕:ビール瓶2本

  • 最低飲酒量 ビール1000ml

 

解説

 32歳の「僕」が18歳の女の子とデートをしながら、グダグダあれこれ考えたり、ビールを飲んだりする。

 18歳の女の子にビールを飲ませたりはしない。

 

「とんがり焼の盛衰」

飲酒内容

なし

 

解説

 とある製菓会社が「とんがり焼」なるお菓子の改良品を募集し、それに応募した「僕」が直面する恐怖体験。

 文学新人賞や文壇をストレートに寓話化して皮肉った作品らしいが、不条理ホラーコメディとして読んでみてもなかなか面白い。だが飲酒はしない。

 

「チーズ・ケーキのような形をした僕の貧乏」

飲酒内容

 なし

解説

 「僕」がかつて住んでいた、 チーズケーキのピースのような形をした「三角地帯」についての話。

 非常に流麗で、なおかつ村上春樹的な文章を堪能できる一編である。しかし残念ながら酒は飲まない。

 

「スパゲッティーの年に」

 飲酒内容

なし

解説

 1971年、スパゲッティーの年におこった一幕。

 スパゲッティ―と電話が出てくる小説であり、「スパゲッティ―を茹でていたら電話がかかってきた」という『ねじまき鳥クロニクル』的なシチュエーションの短編だと勝手に記憶していたが、実際にはスパゲッティーを茹でていないときに電話がかかってくる。

 主人公の行動は、スパゲッティ茹でることと、電話にでることだけなので、飲酒描写はない。

 

「かいつぶり」

飲酒内容

なし

解説

 とある場所に入るために必要な合言葉をめぐる、二人の男のやり取り。

 どことなく不条理演劇を思わせるような内容であるが、それはそれとして飲酒描写はない。

 

「サウスベイ・ストラット――ドゥービー・ブラザーズ「サウスベイ・ストラット」のためのBGM」

飲酒内容

 私:ビール 少なくとも缶2本*3

  • 最低飲酒量 ビール700ml

女:ウイスキー指三本分*4

解説

 タイトルが非常に長いチャンドラーの初期短編のオマージュ 作品。ハードボイルドな男のハードボイルドな小話。

 ハードボイルドの男なので、当然のようにがぶがぶ酒を飲む。

 ところで、どうやら村上春樹のなかでは、ハードボイルドな男の一人称は「私」であるようだ。『ハードボイルド・ワンダーランド』でも「私」だったし。

 

「図書館奇譚」

飲酒内容

なし

 

解説

 図書館の地下に幽閉された「僕」が、羊男や謎の美少女とともに脱出を図る話。

 主人公である「僕」は少年であるため、飲酒描写はない。

 短い話の中に、奇妙な図書館、地下世界、羊男、声が出せない/言葉の不自由な美少女といった、村上春樹作品にしばしば登場する人物や舞台装置が詰め込まれ、美しい世界を構築している。

 個人的に村上春樹の短編の中でも、特に好きな作品である。

 

「あしか」

飲酒内容

なし

解説

 「あしか祭り」やこの次に収録されている「月刊「あしか文芸」」に連なる、非常に短い作品で、タイトルの通り、あしかの話である。村上春樹の中で、あしかはちゃらんぽらんなおっさんみたいな性格をした生き物らしい。

 

「月刊「あしか文芸」」

飲酒内容

 私(あしか):ビール グラス1杯 缶1本 酒(分量不明)

  • 最低飲酒量 ビール700ml

戸塚(あしか):酒(分量不明)

 

解説

  月間あしか文芸の執筆者である「私(あしか)」が、麻雀をしたり、昼寝をしたり、編集者をごまかしたりする話。あしかだって酒を飲むのである。

 

「書斎奇譚」

飲酒内容

なし

 

解説

 真っ暗闇な部屋のなかで原稿を書く、謎の老作家の家にやってきた編集者が体験する恐怖体験。

  「鏡」と同じくかなりストレートな怪談話だけれど、言葉の不自由な美少女が出てきたり、暗い部屋で正体不明の何かと対峙する等、村上春樹っぽい展開が増量されているのが特徴。

 

「おだまき酒の夜」

飲酒内容

僕:おだまき酒 最低2杯

  • 最低飲酒量 おだまき酒360ml

門番:おだまき酒 最低1杯

  • 最低飲酒量 おだまき酒180ml

おだまきA:おだまき酒 最低1杯

  • 最低飲酒量 おだまき酒180ml

おだまきB:おだまき酒 最低1杯

  • 最低飲酒量 おだまき酒180ml

 

解説

 酒の話である。

 おだまき酒とはなんなのか、おだまきが作る酒であるという以上に、小説の中に説明はない。作中では木の器で飲んでいることから、おそらく日本酒的なものではないかと推測し、アルコール度数は15度、1杯あたり1合=180mlとした。違っているかもしれない。

 そもそもこの作中でのおだまきがどういう生物なのか、それもよくわからない。「二頭」と数えられているが、それなりに大きな動物なのだろうか? それとも植物のおだまきなのだろうか?

 

「はじめに・回転木馬のデッド・ヒート

 飲酒内容

なし

 

解説

 単行本『回転木馬のデッド・ヒート』に収められた序文。序文なので特に飲酒しない。

 単行本『回転木馬のデッド・ヒート』の収録作品(「レーダーホーゼン」~「ハンティング・ナイフ」)および、今回の調査対象である『村上春樹全作品 1979~1989 5』の末尾に収められた短編「沈黙」は、聞き書きという形態をとっている。

 すなわち、それらの物語は「作者が実在の人物から聞いた話」という設定の下に書かれており、語り手である「僕」は作者と同一人物だということになっている。作中でほかの登場人物から「村上さん」と呼ばれることもある。

 なので、『回転木馬のデッド・ヒート』の収録作品および「沈黙」において「僕」が飲んだ酒は、村上春樹が飲んだ酒ということになる。村上春樹の飲酒観を探る上で、この事実は重要…かもしれない。

 

レーダーホーゼン

飲酒内容

なし

 

解説

 ドイツで、夫のお土産を買うためにレーダーホーゼンの店に行った女性が、離婚を決意する話。

 前回の記事で村上春樹とドイツの二つがそろって飲酒しないはずがない的なことを書いたが、そんなことはなかった。

 

「タクシーに乗った男」

飲酒内容

 僕:赤ワイングラス2

  • 最低飲酒量 ワイン240ml

カメラマン:赤ワイングラス2

  • 最低飲酒量 ワイン240ml

彼女:赤ワイングラス2

  • 最低飲酒量 ワイン240ml

 

解説

 画商の女性が語る「いちばん衝撃的」だった絵『タクシーに乗った男』をめぐる話。劇中で消費されている赤ワインの量が非常にわかりやすかったので助かった。

 

「プールサイド」

飲酒内容

僕:ビール 少なくともグラス1杯 *5

  • 最低飲酒量 ビール350ml

彼:ワインボトル半本*6 ジン・トニック少なくとも3杯*7 ビール缶1本 グラス3杯*8 そのほか習慣として、若い教師たちや「僕」と一緒に飲酒していることが明記されている

  • 最低飲酒量 ビール1400ml ワイン375ml ジン・トニック360ml

彼の妻:ワインボトル半本*9 ジン・トニック少なくとも3杯*10

  •  ワイン 375ml ジン・トニック360ml

 

解説

 35歳の男の半生と、老いに関する問題意識の物語。

 徹底的なダイエット中であっても、飲酒だけは(過度に飲みすぎない範囲において)制限されないというあたりがわりとすごい。ふつう一番最初に制限すると思うけれど。

  ところで、この調査において、ウォッカ・トニックと合わせて、ジン・トニックも1杯あたり15度/120mlということにしておいたけど、我ながらかなり濃い目のレシピですね。

 

「今は亡き王女のための」

飲酒内容

僕:ビールグラス1杯*11

  • 最低飲酒量 ビール350ml

彼:ウイスキーグラス2杯*12

 

解説

 前半はスキーサークルの姫と村上春樹によるラブコメ、後半は一転して、(前半から予想できることではあるけれど)スキーサークルの姫の暗い現状が語られる。

 前半部分のラブコメが、あまりにストレートなラブコメで、読みながら思わず笑ってしまった。作者=村上春樹が実際に体験した出来事という設定の小説なのに、ど直球のラブコメ展開をぶちかます村上春樹のすさまじさがわかる一編。

 あと、ごく短い時間にウイスキーをダブルで2杯飲んでいる「彼」も、何気にすごいと思う。おまけに行きつけのバーの店主におかわりをすすめられている=普段は3杯以上飲んでいるわけで、結構な酒豪キャラだ。

 

「嘔吐1979」

飲酒内容

僕:ウイスキー少なくともグラス1杯 そのほか「彼」と一緒にビールを飲む習慣があるようだが、劇中では飲んでいない

彼:ビール少なくともグラス2杯*13 缶1本*14  ウイスキー少なくともグラス4杯*15 

 

解説

  友人の奥さんとこっそりセックスするのが好きという妙な趣味を持った男が、原因不明の嘔吐に襲われ続ける話。

 毎日ほとんどの食べ物を嘔吐するにも拘わらず、途中から開き直って、毎日飲酒を始めるあたり、飲酒への執着がすさまじい一編である。

 

「雨やどり」

飲酒内容

 僕:ビールグラス1杯 ウイスキーグラス2杯*16

彼女:ビール少なくともグラス1杯*17ウイスキー少なくとも3杯*18、ワイン少なくともグラス1杯*19、カクテル(種類、分量不明)

獣医師:ウイスキー少なくともグラス1杯*20

 

解説

 村上春樹が雨やどりのために入ったバーで、偶然再会した女性編集者から、自分は売春をしていたと聞かされる話。

 主人公にあたる女性は、わりとがぶがぶ酒を飲んでいるんだけど、何をどれだけ飲んだかあいまいな書かれ方がされていることも多く、この調査のルールに従ってカウントされた飲酒量=最低飲酒量はかなり少なくなってしまった。

 

「野球場」

飲酒内容

 僕:ビール瓶1本

  • 最低飲酒量 ビール500ml

彼:ビール瓶1本*21

  • 最低飲酒量 ビール500ml

 

解説

 読者である青年から小説を送り付けられた村上春樹が、その青年に鰻をおごってもらったり、彼がかつて一人の女性をストーカーしていたという事実を聞いたりする話。

 作中作である、シンガポールでビールを飲み、蟹を食べたら嘔吐してしまったという小説の中の飲酒についてはカウントしていない。(実際に作中人物が酒を飲んでいるわけではないので)。また、この作中作は、実際に青年が体験した出来事のようだが、彼が本当にシンガポールでビールを飲んだのか、確定できる記述はないため、これもカウントしていない。

 

「ハンティング・ナイフ」

飲酒内容

僕:ビール少なくとも缶9本*22ウイスキー1口、ウォッカ・トニック グラス16杯*23

  • 最低飲酒量  ビール3150ml ウイスキー10ml ウォッカ・トニック 1920ml

 

解説

 村上春樹がバカンスにやってきたアメリカのビーチで、酒をがぶがぶ飲んだり、知り合った青年からハンティングナイフを見せてもらったりする話。

 9日間のバカンスで、村上春樹は毎日ビールを飲んでいたらしいが、具体的な飲酒量が書かれていないので、ルールに従って1日当たり缶1本とカウントすることとする。(平気で3、4本くらいは消費しているような気がするけど)

 ちなみに、この短編によって、村上春樹ウイスキーの瓶をポケットの中にいれて散歩する上、コップを使わずに直接口に含むというワイルドな飲み方をしていることが明らかとなった。この飲み方で消費される飲酒量は、とりあえず1口当たり10mlということにしておいた。

 

「沈黙」

飲酒内容

 なし*24

 

解説

 ボクシングをやっていた大沢さんが、クラスの中心人物を殴ってしまったがために、いじめの被害に遭う話。クラスの中心人物と、生理的に相いれず、対立していたという経験が僕にもあるので(この小説とは反対に、僕ががり勉タイプでクラスの中心人物がスポーツマンだったけど)、個人的に非常に共感しながら読んでいた。

 この短編自体には飲酒描写はないのだが、以下のような終わり方をする。

「まだ時間は早いけれど、ビールでも飲みませんか」と少しあとで彼は言った。飲みましょう、と僕は言った。たしかにビールが飲みたいような気分だった。

 まさかの「ビールが飲みたくなった」オチであり、「カンガルー日和」と同じである。

 つまり、『村上春樹全作品1979-1989 5』はビールが飲みたくなって始まり、ビールが飲みたくなって終わる本だと言い張ることができる…かもしれない。

 

今回のまとめ

そういうわけで『村上春樹全作品 1979-1989 5 短編集Ⅱ』に掲載された短編の飲酒量は、下表のとおりとなります。

 

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今回調査した短編のうち、酒類が消費されていたのは32作品中18作品。消費された酒は

  • ビール13200ml
  • ウイスキー(ストレート/オン・ザ・ロック)640ml
  • ワイン1710ml
  • ウォッカ・トニック1920ml
  • ジン・トニック720ml
  • おだまき酒900ml
  • アルコールの合計 1718.4g

という結果でした。『村上春樹全作品 1979-1989 5 短編集Ⅱ』が426pなので、1ページあたりのアルコール消費量は約4g、前回の4.6gから僅かに減っています。

 理由はいくつか考えられますが、『カンガルー日和』に収録されている作品(「カンガルー日和」~「図書館奇譚」)のほとんどが、原稿用紙10枚程度の掌編であり、飲酒描写に文字数を割く余裕がなかったことが大きいのではないかと考えられます。

 

 一人称話者が飲んだ酒に絞ると、以下の通り。繰り返しますが、このうち『回転木馬のデッド・ヒート』の収録作品の一人称話者は、村上春樹本人という設定です。

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 前回とほぼ同じで、全体のアルコールの半分を一人称の語り手が消費しています。

 前回と比べて、ややビールの割合が少ない(全体の約52%)ですが、これは今回の調査対象の中で最も多くの酒を消費した短編『ハンティング・ナイフ』において、ウォッカ・トニックが大量消費されていたためです。『ハンティング・ナイフ』を除いた場合、「僕」が飲んだアルコールのうち、ビール由来のものが占める割合は、約70%にまで上昇します。

 『ハンティング・ナイフ』においても、「僕」がビールを強く望むシーンがありますし、「僕」=ビール飲みキャラというのは間違いないようです。

 

 というわけで、今回の調査はここまで。

 次回は村上春樹全作品 1979-1989 8 短編集Ⅲ』について調査していきたいと思います。

*1:札幌の街にて、友人と会話しながら。ちなみに生

*2:ホテルにて

*3:「ビール缶をかたっぱしから空け」と書かれているので実際にはもっと多い

*4:バーボン、オールド・クロウ

*5:カフェテラスにて。「彼」がビールをおかわりする際に「自分のぶん」を注文しているので最低1杯。僕の注文も「おかわり」である可能性もあるが、確定できるような記述はない。なお、このほかにも習慣的に「僕」と「彼」はカフェテラスで飲酒をしているようである

*6:妻と二人で1本

*7:3杯か4杯

*8:喫茶店にて1杯。カフェテラスにておかわりをしているので最低2杯

*9:彼と二人で1本

*10:3杯か4杯

*11:これに加えて、酔っぱらって寝ていた「僕」の手元にビール缶が転がっていた描写から、缶1本以上飲んでいると解釈もできるが、確定できる描写がないうえ、作中に描かれた時間の中で飲酒していないため、カウントしていない

*12:スコッチ・ウイスキーオン・ザ・ロックをダブルで、ペリエで割って

*13:6月3日の夜に少なくとも1杯、嘔吐期間の途中で1杯以上(長期間にわたって大量に摂取したものと思われるが、具体的な分量は不明)

*14:6月4日の朝に1本

*15:6月3日の夜に少なくともグラス1杯、嘔吐期間の途中で1杯以上(長期間にわたって大量に摂取したものと思われるが、具体的な分量は不明)、「僕」との会話中に2杯(途中でおかわりしている)

*16:シーヴァス・リガールのオン・ザ・ロックをダブルで2杯

*17:退職してから初めの一週間のうちに

*18:シーヴァス・リガールのオン・ザ・ロックをダブルで2杯、ダニエルズを少なくとも1杯

*19:退職してから初めの一週間のうちに

*20:ダニエルズ

*21:「僕」と「彼」の二人で瓶ビールを分け合い、さらにもう1本おかわりをしている。なお、「彼」はストーカー中にビールの空き缶を部屋に散らかしているので、この期間中にも飲酒の習慣はあったようである

*22:9日のバカンスで、毎日ビールを飲んでいることから

*23:8日のバカンスで毎日2杯ずつ、9日目は飲めなかった

*24:ただし主役である大沢は、高校生時代に飲酒の習慣があったことを明記されている