最近見た映画のお話、あるいはキング・オブ・シスコンについて

 皆さんお元気ですか。死角からの一撃です。

 最近は、前々から見よう見ようと思いながらも結局見ていなかった映画を、順番に見ています。

 いやあ、映画って本当にいいものですね。

 今日は最近見た映画の中でも、特に面白かったものを3点ピックアップして、備忘録的に感想を書いておきたいと思います。

 

 

 

『SPY/スパイ』

 

 日本国外ではめちゃくちゃヒットしたらしいけれど、日本ではなぜかビデオスルーになってしまった映画。

 スパイのサポート役をしている太った女性が、相棒が敵組織に殺されてしまったので、敵討ちのために奔走するドタバタコメディ。

 ジェイソン・ステイサムが出演しているという理由でとりあえず鑑賞したが、なかなか面白かった。

 下品なギャグを多用したコメディ作品なので、人によって好き嫌いはあると思うけれど、とりあえず僕は、登場人物全員が、老若男女問わず5秒に1度位の頻度で「ファッキン」「ファッキン」と言っているのを見ているだけで、幸せな気分になれた。

 アクションの量はやや少なめだが、メリッサ・マッカーシーさん演じる主人公が、見た目に反してキレキレの格闘を演じてみせる様子は、かなり見ごたえがあってよかった。

  当然のように主人公がゲロを吐くシーンがあったり、核爆弾が異常にぞんざいに扱われるのはご愛嬌。

 

 

『哀しき獣』

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 韓国ノワールの傑作といわれている映画。

中国と北朝鮮の国境付近にある延辺朝鮮族自治州で、借金生活を送っている主人公グナムは、闇社会の大物ミョン社長に嘱託殺人を依頼され、韓国に密入国する。ついでに韓国に出稼ぎに行ったまま連絡が取れなくなってしまった妻を捜索するが……

 

 みたいなあらすじ。

 前半はやや重苦しい空気の中、淡々と静かに物語が進行するが、中盤で殺人事件が起こると雰囲気が一転、予測不可能な展開やハードなアクションの連発で、画面から目が離せなくなる。

 悪役であるミョン社長のインパクトがとにかく強烈。

 冗談を言ったり、ぶつくさ文句言ったりする様子は、普通に気のいいおっさんのように見えるが、いざ戦闘になると圧倒的なパワーで敵を殺していき、その恐ろしさとワイルドっぷりで見るものを痺れさせてくれる。

 全体を通して非常に面白かったが、刃物のダメージがあきらかに小さいのはやや不満。本作では敵味方問わず、あらゆる登場人物が、包丁やら手斧やらで敵対勢力をブスブス攻撃しまくり、血しぶきも飛びまくるのだけれど、基本的にあんまりダメージを受けない。やっぱり刺されたら刺されたでしっかりダメージを受けてほしいので、そこは気になった。

 他にも細かい不満点はいくつかあるが、しかし、そんな些細な欠点は全て吹き飛ばしてしまうくらい、パワフルでエネルギーに満ち溢れた作品である。超おすすめ。

 

 

トト・ザ・ヒーロー』 

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 『哀しき獣』と並んで、最近見た映画の中では圧倒的に面白かった。

 あらすじを説明するのが非常に難しいのだけれど、あえてするなら、

 老人ホームに暮らす主人公トマは、幼いころ近所に住んでいた同い年の男アルフレッド・カントを憎んでいた。

 トマは、本来自分はカント家の人間であり、助産院が家事になった際にアルフレッドと取り違えられたのだと信じていた。金持ちとしての人生、陽気な育ての父親、美しい姉アリス、姉によく似た恋人エブリーヌ……トマはアルフレッドが自分から全てを奪っていったと考えていた。

 ある時、トマはアルフレッドへの復讐を決意して、拳銃を携えて彼の家に向かうが…

 という感じ。

 主人公であるトマが妄想癖のある老人という、所謂「信用できない語り手」である上に、マジックリアリズムっぽい演出を多用しているせいで、何が真実で何が嘘なのかわからないという、観客を混乱させる気満々の作劇が特徴。

 色々語りたいことはあるが、とにかくシスコン映画として屈指の出来。美しい姉アリスに対するトマの執着心が常軌を逸して痛々しくて、ときめきが止まらなかった。

 トマと姉アリスの関係は、近親相姦以外の何物でもないのだが、トマは自分は本当はカント家の子どもであり、アリスとは実の姉弟ではないと考えているわけで、この倒錯っぷりが非常に心地よい困惑感を与えてくれる。

 そして、大人になった後も、彼は姉とよく似た風貌の女性に執着したり、老人になってもぐずぐずとシスコンを引きずって幻影を見ちゃったりするので、僕なんかは「トマよ、お前こそシスコンの帝王だ!キング・オブ・シスコンだ!」と謎の称号をトマに贈りたくなってしまう。

 シスコン関連の描写以外も、トマの父親が歌う陽気なシャンソン「ブン」を使った演出や、物語として非常に必然性・納得度の高いラストの展開、物悲くも軽やかな独特の後味など、賞賛すべきところは枚挙に暇がない。

 アマゾンプライム会員なら無料で見られるので、未見の方は是非見て欲しい。